管球自在 かんきゅうじざい

管球自在[かんきゅう-じざい] 1.初心者が書く真空管アンプ製作記 2.自由な設計による真空管アンプ

EL34 三結シングルアンプの制作 その10

 

電源回路を作ってみる

 
まずはじめに申し上げておくと、僕はラグ板とか使ったことありません。
ユニバーサル基板なら使ったことがあります。
空中配線は恐怖の対象です。
人生で扱った最高電圧はニキシー管の175V4mA。320V100mA以上とか相当に恐ろしいと思っています。
 
とは言え、ここまできて作らないわけにもいきません。
そんなわけでまずは電源回路から。
 
いきなりシャーシの中でラグ板使ってまともに動くものが組める自身がなかったので、バラック代わりにユニバーサル基板で組んでみました。
 
 

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こんな感じ

インプット用のコンデンサが2種類、450V/100μFと450V/33μFです。リレーで切り替えできるようにしました。
チョークコイルからの戻りを受けるコンデンサも450V/100mFになっています。
 
 
これを、こんな感じでシャーシの中に置いてみます。
とりあえず、一番左端(写真ではうら返しなので右側になります)のUS8Pソケットに、電源トランスから回路図通りに結線して、その先に接続しますが・・・うーん、なんかコレジャナイ感がすごい(笑)

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置いてみた
 
一応、緑色のテープのあたりに整流管用のメタルクラッド20Ωを置いとこうかなと思ったのですが、ちょっといまいちですね。
もーちょっとスペースを有効に使おーよ、って気分になります。
まぁ、うだうだ言っても仕方がない。
 
 

配線しちゃおう

もともと、内部の部品配置についてはそれ程考えていなかったので、現物合わせで順番に配置していきます。
 
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 製作途中の写真をあまり撮っていなかったので、殆ど終了した状態ですが、こんな感じになりました。

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電源トランスの脇に、ヒーター用のダイオードブリッジが3個並んでいます。
こいつのおかげでだいぶ中身がごちゃごちゃしてしまいました。
 
ブルーのコンデンサが25V15000μFで、コレを2連にして間に1~2Ωの抵抗を挟んでヒーター用の直流を作っています。
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配線はそれなりにのんびりと週末の時間を使って行いました。
トータルで2日半といったところです。
 
 
配線が出来上がると、早速火を入れたくなりますが、いったん落ち着こう。
日を改めて(実際には次の週末になってしまった)配線チェックをざっと済ませてから、電源を投入します。
 
スイッチを入れるときにはめちゃくちゃ緊張します。
感電して死んでしまうんじゃないかとビビりながら、意を決して電源ON!
 
取りあえず、どこか燃えたりコンデンサが爆発しない事を確認して、すぐに電源オフ。
 
改めて真空管を差して、ダミーロードの8Ωセメント抵抗を出力に繋いでから、再度電源を投入します。
 
ここで各部の電圧チェックです。
うわ、B電源の電圧が高い!
400V近く出ています。
ある程度電圧が高く出る事は想定していましたが、流石に50Vも高い電圧が出るとは。
 
急いで電源を落とし、左右のチャンネルを分岐する前の部分に510Ωの抵抗を割り込ませました。
 
これによって、EL34のプレート電圧が323V、バイアス22.5Vになりました。
プレート電流は大凡50mAで、だいたい良しとします。
 
初段の6H9Cは272V程になりました。これはちょっと想定より高めですが良しとします。
ヒーター電圧は3系統とも6.2V〜6.3V。ばっちりOKです。
 
一度電源を切り、ダミーロードを外して、500円のジャンクスピーカーを接続。
いよいよ音出を出してみます。
 
 
スマホをアンプの入力に接続し、AmazonMusicでお気に入りの曲を再生待ちの状態にして電源を投入。
ジャンクスピーカーはうんともすんとも言いません。
 
数分待って、各部の電圧が安定している事を確認してから、音楽を再生せずにボリュームを絞りきった状態から開放状態まで回してみます。
 
ジャンクスピーカーはやはりうんともすんとも言いません。
 
まぁ、発振してぎゃーとか言ってないだけいいのかな?
でも、ブーンとか、ハムも出てこないのはいいんだろうか?
いや良いんだけど、なんとなく不安になります。
 
意を決して、再度真空管アンプのボリュームを絞りきって、スマホの再生ボタンをON。
アンプのボリュームを上げていくと・・・、聞こえる!
 
ジャンクスピーカーから音が鳴ってる!
しかも、ちゃんとまともな音楽が出てきます!
 
嘘だろ?一発で?本当に?
でも、目の前の裸の小さなスピーカーユニットは、Maroon5の音楽をしっかり奏でています。
 
これはすごい。
他の方々のサイトで、初めて音出しした時の感動はたくさん語られていますが、僕も全く同じでした。
本当に、自分が作ったアンプが音楽を再生している感動というのはかなりのものです。
しばらくの間、ボリュームを上げたり下げたりしてみましたが、どうやら大丈夫そうです。
 
 
よし、
ならば。
 
この日のために、ジャンクではないスピーカーを用意していました。
FOSTEXのFE126-NVユニットをバスレフ型のエンクロージャに突っ込んで作ったスピーカーを接続してみます。
 
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コレを
 

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こうしたヤツね。
 
コレを繋いで、改めて音を出してみます。
 
電源を入れて、電圧をチェックして、妙な音がスピーカーから出ていない事を確認して。
 
スマホの音楽を再生して、ボリュームを上げていくと。
 
驚きました。
本当にすごい。
自分が想像していたよりも遥かに綺麗な音で鳴ってくれます。
 
正直、初めて作ったアンプですし、おそらく電源入れたらブーンというハムの音がなり、歪んでぼやけた音が出るものとばかり思っていました。
 
再生を止めて、スピーカに近づいてもハムは全く出ていません。
FE126NVの能率は92db。確かにものすごく能率の良いスピーカーじゃありませんが、
直接スピーカーに耳を数センチまで近づけると、僅かに低音のハムが聞こえる程度ですので、実用上は十分です。
 
確かに、ポップスを聴けば、高音域のパワーがそれほどない様にも感じます。
でも、音自体はものすごく綺麗です。低音も十分出ている様に感じます。
 
嬉しくなって、色々な曲を掛けてみました。
ポップス、ジャズ、クラッシック。
やはりポップスは僅かに高音域が弱い感じがしますが、ジャズは本当に素晴らしい。
クラッシックも聴き疲れのない綺麗な音で聞こえてきます。
 
もちろん、自分が作ったものであるという身びいきもあると思います。
恐らく、世のベテランアンプビルダーの皆様からすれば稚拙なアンプでしょうし、音も大したことはないのだろうと思います。
 
それでも、自分が作ったアンプで音楽を聴くという体験は、なんと贅沢な事でしょうか。
その週末は、ひたすら音楽を掛けっぱなしで引きこもる事になりました。
 
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回路図などは次回。