管球自在 かんきゅうじざい

管球自在[かんきゅう-じざい] 1.初心者が書く真空管アンプ製作記 2.自由な設計による真空管アンプ

EL34 三結シングルアンプの制作 その12(トラブル編)

 
 

それは突然やってきた

 
真空管アンプの音出しから約1週間。
 
真空管アンプの世界には、エージングなる言葉があります。
 
曰わく、できたてのアンプやスピーカーは、しばらく使っていると段々音が良くなってくると。
 
技術的な背景が全く理解できないのですが、機械における「慣らし運転」の様なものなのでしょうか。
 
機械的なモノが慣らし運転でフリクションが良くなる、というのは何となく理解できるのですが、アナログとは言え電子部品にそんなものあんの?と言う疑問が拭えません。
 
もしかしたらスピーカーユニットについては、鳴らすことでコーンが振動するわけですから、ユニットの物理特性が少し変わる、なんて事があるのかもしれません。
 
が、どうにもこうにも僕にはオカルトな理論に聞こえてしまって仕方がありません。
 
 
とは言え、1週間くらい経つと、確かに初期の頃に比べて高音が伸びてきた感じがします。
これがエージングとやらが進んだおかげなのか、単に自分がこのアンプの音に慣れただけなのかは判りません。
とにかくいい感じの音で鳴っています。
 
さて、その日も仕事から帰ってきてアンプの電源を入れ、スマホを繋いでこのところお気に入りのThe Chainsmokersを気持ちよく聴いていたのですが、途中から「ボッ・・・ボッ」という雑音が入る様になりました。
 
ん?なんだ?と思うまもなく、バリバリとかボリボリという妙な雑音とともに右チャンネルのスピーカーの音がどんどん小さくなってきます。
 
これはいかん、トラブルだ。と急いでアンプの電源をオフ。
いつもだったらコンデンサに溜まった電力によって、数十秒かけてゆっくり小さくなる音が1秒も掛からずに聞こえなくなりました。
 
こりゃ、どっかが燃えたかショートしたかな?と、アンプが冷えるのを待って診察開始です。アンプをひっくり返して中を覗き込むと、あの電子部品の焼ける匂いが鼻を突きます。
 
うわこれどっか燃えたやつだ。 
さすがは僕の作ったアンプです。
わずか1週間でぶっ壊れました。
 
なんだろなー。
ほら、ダメな子ほど可愛いっていうし?
こういうお茶目なところがあってもいいんじゃない?
うん。
 
とかなんとか、自分の精神を誤魔化しつつ、ざっと全体を見れば、テスターを当てるまでもなくB電源の左右チャンネルが分岐してすぐのところに入っている510Ω(この時はここに510Ωを入れていた)の抵抗が焼けて、あしたのジョーよろしく真っ白になっているのが目に入りました。
 

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下が燃えて真っ白になっちゃったヤツだ
あーりゃりゃ。
こいつが原因か。
ん?でも、こんなとこの抵抗が焼けるってどういうこと?
ここは52mA程度しか流れないから、消費電力はせいぜい1.3〜1.4W程度のはず。3Wの抵抗が焼けるとか何が起きたんだろう?
 
周囲の配線がGNDやシャーシとの間でショートしている気配もありません。
アクロバチックな空中配線ですから、短絡の危険性は多少あると踏んでいましたが・・・なんでココ?
 
 一応、他の抵抗を一通りテスターでアタってみましたが、どれも正常で、焼けた感じもありません。
 
まさかと思い、問題の抵抗と接続されている450V/120mFのコンデンサを測ってみると・・・容量は「0μF」、抵抗値を測ってみるとこちらも見事に「0Ω」。うそー、やだー。
 
450V/120μFの電解コンデンサが見事に短絡しています。
僕は見事に悶絶しています。
 
なるほど確かに、このコンデンサがショートモードでぶっ壊れたら、直前の510Ωを通して370V超の電圧がアースに落ちる事になります。
ここに流れる電流が52mAだとして約20Wの発熱ですから、そりゃ3Wの抵抗なんて一瞬で焼けますわ。
 
うーん、確かにこのコンデンサ、他の部分とは違って、実装スペースの関係で耐熱85度Cのお安いコンデンサを使っていました。
 
それがいけなかったのか。
あるいは基板直立型で足が短いので、ラグ端子に半田付けした際に過度のストレスや高温を与えてしまったのかもしれません。
この1週間はトラブルもなく動いてたんだけどなぁ。
 
原因が何であれ、使用開始わずか1週間で抵抗1本燃やすのは大変によろしくありません。
 
ここは左側のチャンネルにも同じコンデンサを使っていますから、いつ同じトラブルが発生するかも知れません。両方あわせて交換してしまう事にします。
 
ちょうど手持ちに、近所のaitendoで買ってきたRubycon社製450v/120mFがありましたので、これに交換です。こっちの耐熱は105度Cです。
 
先日見つけた1個200円のこのコンデンサ
安くて大変に良いのですが、他のものよりも明らかに小さいので、耐圧とかホントに大丈夫なん?という不安があって今まで使っていなかったのですが、せっかくです、この機会に試してみましょう。
 
これまでのコンデンサと長さが違う(その代わり細い)ので、コンデンサの頭がアース線の下にもぐりこんでしまいましたが、まぁどうにかなるでしょう。
念の為、絶縁用の養生テープを小さく切って、シャーシと素子の間、およびアース線と素子の間に挟み込む様にして貼っておきました。
 
コンデンサ2本を交換して、真っ白に焼けたあしたのジョー510Ωは少し抵抗値を下げて470Ω/3Wに交換。これで定格の50%未満です。
とりあえず各部の導通、絶縁をチェックして電源を入れます。
 
うん、問題なく電圧も出ています。
ビクビクしながらしばらく待ってみましたが、とりあえずどこかが焼ける気配もありません。
そのまま音を出してみましたが、これも問題なさそうです。
さらに数時間使ってみましたが問題なさそう。
 とりあえずこれで修理OKとしました。
 
その後は大きなトラブルなく快調に動いてくれています。
まずは一安心かな。
 
このトラブルで、自分で回路図のことをちゃんと頭に入れておく、というのはとても大切なのだなぁと実感しました。
どこがどうなっていれば正しくて正常な状態なのか把握してるって大切。
回路図丸コピーでなんも考えずに作ってたらと思うと、ちょっと怖いなと感じました。
 
真空管アンプで使っている300Vオーバーの電圧は、簡単に人を殺します。
電源を入れて、各部の電圧チェックする時などは、冗談ではなく命がけの作業です。
そういうホビーであるという事をちゃんと理解した上で楽しむ必要があるんですね。
 
 
さて、それはともかく。
懸案だったフロントパネルの加工もはじめました。
時間をかけてのんびり作っていくつもりなので、コレについては形になった時にでも改めて報告したいと思います。
 
 これにて、EL34三結シングルアンプの製作編はいったん終了です。


最後に
このアンプの設計、製作にあたって、幾度となくこのブログ上やメールでアドバイスをくださったARITOさん、本当にありがとうございました。
心から感謝しております。
 
また、
を大いに参考にさせていただきました。
本当にありがとうございました。
 
  
 
まるでブログが終了するかの様な文言を並べておいてアレですが。
別におわんないです。
 
ってか、まだまだ手も入れたいし。
違うアンプも作ってみたいし。
そもそもこのアンプは試作零号機扱いだし。
いつかは2A3とか300Bとかもやってみたいし。
プッシュプルもやってみたいし。
お金もスペースもいくらあっても足りないから、しばらくは大人しくしとくけど。
 
という訳で、引き続きブログは続くのです。
今後ともよろしくお願いします。