管球自在 かんきゅうじざい

管球自在[かんきゅう-じざい] 1.初心者が書く真空管アンプ製作記 2.自由な設計による真空管アンプ

300Bシングルアンプの制作(その1 妄想編)

お久しぶりです。

 

相変わらずリモートワーク全開引きこもりの毎日ですがみなさまいかがお過ごしでしょうか。 

 

 

そういえば過去記事(下記参照)で「我が家にはレコードはおろかCDプレーヤーすらない(キリッ!」と宣言しましたが、遂にCDプレーヤーを手に入れました。

ssw.hatenadiary.com

 

 

お迎えしたのは、DENONのミッドレンジCDプレーヤー、DCD-1500REです。

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CDプレーヤーと言えば、数千円から1万円程度のポータブルプレーヤーしか買ったことのない僕にとっては、これはとんでもない高級機になります。

 

見てくださいこの気品溢れるNO DISK

 

え?もちろん中古ですよなに言ってるんですか新品買う財力があるわけないじゃないですか財務大臣に殺されやだー。

 

およそ10年前の機種ですが、ヤフオクでお安く落とすことができました。

表から見えない裏側にキズがありますが、見た目はめっちゃ綺麗ですし、動作にも問題ありません。

 

 とりあえず上にアンプを乗っけて音を出してみました。

(こういう使い方していいのか?)

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音を出してみた感想は「思ってたよりすげぇ」でした。

めっちゃクリアです。

これまで、スマホかパソコンで、AmazonMusicをせいぜいHD音質でしか音を出してこなかったからかもしれませんが、まともなCDプレーヤーを使うとこんなにいい音になるんですね・・・驚きました。

ってか、うちのアンプもこんな音出せるんやね・・・いい、良いじゃないか 。

我が家でブックオフ行きを免れて生き残っていた200枚ほどのCDがようやく日の目を見ています。 

 

 

 

 

さて前回の記事で、もう一個アンプ作るべぇとなりました。次のアンプをどうするか、楽しい妄想の時間です。

 

前作を作った時から、やってみたいと思っていたアンプは2つあります。
KT88のプッシュプルと300Bシングルです。

 

KT88-プッシュプルは、秋葉ヨドバシの視聴コーナーで、TriodeのKT88-プッシュプルをFostexの20センチフルレンジと組み合わせて聴く機会があり、その解像度(って言葉で良いんですかね?音の細かい部分までクリアに聞こえたという意味です。分解能?言葉がよく判りませんが、なんかしっくりこないですね・・・)の良さがすごく気に入り、機会があったら挑戦したいと思っていました。

 

300Bシングルは、純粋に真空管がかっこよかったのと、回路的に直熱三極管を弄ってみたいと思っていました。そういう意味では、2A3とか45あたりも同じですね。
やっぱST菅ってかっこいいんですよ。これぞ「ザ・真空管」って感じです。

 

KT88-PPについては、出力菅を4本必要とするコストの問題と、僕がプッシュプル動作をいまいちよく判っていない、という不安がある事と、いわゆる全段差動アンプという形式の回路でやってみたいという思いもあり、もう少し回路を学習してからの方が良さそうな事もあって、後日の課題とすることにしました。

 

そんなわけで、今回は300Bのシングルアンプを作ってみることにしました。

出力菅について300Bを選びましたが、この球、自作界隈ではなんというか真空管アンプの最終目的地みたいなことになっていて(主観)、わずかに1台の実用アンプを作っただけの僕には、恐れ多いというか10年早いという感じがします。

 

が、考えてみれば自宅で使用するアンプを何十台と作る事はなかなか考えにくい訳で、我が兎小屋邸宅の広さを考えれば、2台もあれば十分、どんなに贅沢したって3台まで。それ以上置けるスペースなんて物理的にないわけで。

そもそも趣味で作って遊んでるだけですし、そういうしきたり的なのどーでもいーじゃん?ということで気にしないことにします。

 

さて300Bシングルにするとして、初段、ドライバについては色々なバリエーションが考えられます。

有名どころではWE91Bタイプの回路や、ドライバ直結のロフティンホワイトなど、いろいろな作例が発表されていますので、それらも参考にしつつ、楽しい妄想タイムです。

 

今は色々なブランドの300Bが発売されていますが、とりあえずここでは往年の名機ウエスタンエレクトリック300Bのデータシートを覗いてみると、シングルA1級動作の動作例として、以下のような数字が並んでいます。

プレート電圧:350V

グリッドバイアス:−74V

プレート電流:60mA

負荷抵抗(OPT負荷):4kΩ

出力:7W

実際、上記の動作条件はネットを見てみるといろんなところで出会うので、みなさんこの辺りの動作条件を参考にアンプを製作されているのかなと思います。

僕もまずはこの辺りを参考にしてみようと思います。  

 

まず、バイアスが−74Vという事は、出力管をフルスイングするためにドライバ管は最大出力時に74Vピークの電圧を300Bのグリッドにぶっこむ必要があるという事です。

 

で、今回はおよそ0.71V/r.m.s.(1Vp-p)の時に最大出力が取れる感度を目指して作ろうかなと思っていますので、電圧増幅段に必要なμはざっくり104倍ということになります。

上記はNFBを考えない素の増幅率ですので、最初から無帰還アンプを作るのだと決めていないのであれば、もう少し増幅率に余裕を持たせたいところです。

そこで、目標とする増幅率をざっくりと120〜130倍程度に置くことにしました。

 

さてこの条件で電圧増幅回路を考えてみます。

単段でこの増幅を行おうとすると三極管ではまず無理で、五極管を使う必要があります。

内部抵抗が高い事もありますし、個人的な好みの問題からも電圧増幅段に五極管はあまり使いたくないなと思います。

μフォロア回路の上段を三極管にした構成(いわゆるぺるけドライブ)も考えてみましたが、今回はできればオール三極管の構成がいいなと思っています。

 

前回作ったEL34/6CA7三結シングルでは、6SL7をSRPPにして上手くいったこともあり、今回もSRPPを使いたい気持ちがあります。

実際、300Bを6SN7あたりのSRPPで単段ドライブしている作例はネットでもよく見かけます。

 

ですが、実際に考えてみると、これはそう簡単でもないなと思うようになりました。

 

300Bは軒並み70V前後の深いバイアスで動作させる球ですので、単段増幅では仮にハイμ菅である12AX7を使ったとしても、SRPPでざっと55倍前後の増幅率ですからスイング電圧が不足して苦しいものがあります。GT菅である6SL7ではなおのことこの傾向が強くなります。

またいくらSRPPとは言え、12AX7では出力インピーダンスもそれなりに高くなってしまい、300Bをフルスイングさせる前にドライバがヘタってしまう可能性が否めません。

 

ですので、前回作ったアンプの反省もあり、初段+ドライバ段の2段増幅回路を考えることにします。

 

さてそうなると三極管の2段増幅となります。

パッと思いつくのは、12AU7や6SN7などの低〜中μ管で構成する2段増幅回路です。

初段と2段目を直結にしてこの部分の段間コンデンサをなくす構成というのも良いかもしれません。

 

初めはこれで行こうかなと考えていたのですが、どうも自分の中でいまいち納得ができません。別に何が悪いわけでもないのですが、何となく普通というか当たり前すぎるというか、そういう回路組むなら市販のキットとか完成品でいいじゃん、という思いが抜けません。

 

メーカー製の製品なら、素人の僕が考えるよりも余程きれいに纏まった回路で、定数もバッチリ追い込んだ良いものがたくさんあるし、それと同じもので良いなら自分で作る必要もないよなぁという思いがどうしても抜けないのです。

 

考えてみればこれは当たり前の話で、仕事ではなく、趣味で作るものに製品的な要求仕様などありません。自分で好きなように考えて好きなように設計して作ったら良いわけで、たとえそれがどんなに無駄なことに思えても、自分が楽しければそれで良いのです。

 

実際、僕が初めて作ったアンプは、初段6SL7のSRPPにEL34/6CA7三結アンプというありふれた形式ですが、全段直流点火という要素を入れた事で、あまり見かけない構成になりました。

全段直流点火に意味があったかと問われれば、おそらくそれほどなかったでしょう。それでも、僕は楽しく作れましたし、他になかなかない、という一点だけで、これは自分だけのアンプであると胸を張って言えるものになったと感じています。

 

趣味で楽しんで作る上では、この感覚はとても大切です。

なぜなら、僕は良い音を聞きたいという目的もありますが、それと同じかそれ以上に「部品をいじくりまわして作って遊ぶ」ことが大きな目的の一つなのですから。

 

そんなわけで、今回も回路は趣味丸出しで好きなように考えてみたいと思います。 

で、最近ネットを徘徊していて気になった回路がこれです。

https://www.amazon.co.jp/dp/product/B07MTDTBG1/

 

Aikidoというずいぶん気合の入った名前がついた回路で、詳しい説明は上記のサイトをご覧になっていただくとして、簡単に言うと初段SRPPからの出力を2段目の回路の上段球グリッドに入れて、上段球のカソードから出力を取り出します。

 

これだけならただのカソードフォロアなのですが、この回路が面白いのは2段目の回路の下段球のグリッドに、B電源からコンデンサを通して100kΩ×2で分圧した1/2のB電源リップルを入力しているところです。

 

これにより、初段と2段目でB電源のリップルが打ち消しあい、B電源由来のハムノイズにかなり強い回路になるといいます。

また、回路のインピーダンスは2段目回路の球に依存します。そう、別に初段と2段目で同じ球を使う必要はないと言うのも面白いところです。

 

初段で増幅率を稼ぎ、2段目でインピーダンスの低下を狙うも良しですし、この回路はステレオで8ユニット、双三極管でも4球必要な回路ですから、同じ球を4本ずらりと並べるのもビジュアル的に楽しそうです。

初段は相対的にハムノイズに敏感になる筈ですので、この回路を使う事でかなり静かな電圧増幅回路を作る事ができそうです。使用する球の条件などの必要に応じて今回も直流点火を考えても良いかもしれません。

 

とは言え、この回路だけで300Bをドライブする電圧を稼げるかと言えば答えはNOでしょう。この回路の利得は初段管のμのちょうど半分だとあります。

初段に12AU7を使用した場合、増幅率は8.5〜9位でしょうか。ハイμ管である12AX7を使っても50前後。目標の120倍には届きません。

 

つまりこの回路は、初段、もしくはドライバ段のいずれかに使用する形で、更にもう一段増幅回路を追加して使う形になりそうです。

 

さぁ、面白くなってきました。

でも長くなってきたので次回に続くのです。