管球自在 かんきゅうじざい

管球自在[かんきゅう-じざい] 1.初心者が書く真空管アンプ製作記 2.自由な設計による真空管アンプ

EL34 三結シングルアンプの制作 その4

 

そろそろ決めなきゃな。

僕は、部屋の窓からちらりと空を眺め、うっとおしい曇り空から雨が落ちてこないことを祈りながら、いつも使っているくたびれたトートバッグを片手に部屋を出た。

 

部屋の前の道から続く坂を下り、蔵前通りと国道17号の交差点に向かう。 

交差点を左に折れてしばらく下れば神田明神

その先、目的地がある秋葉原はまるで異世界の住人が欲望のままに書き散らかした前衛芸術のような佇まいで僕を待っていた。

 

正しく昭和の雑居ビルとはこうあるべきなのだ、という風情の建物の1Fは、そこがまるでダンジョンの入り口で、本当に異世界に繋がっているのではないかという気にさせてくれる。

いや、ある意味でその先は本当に異世界なのだ。

 

そこは昭和の昔から現代に残るいにしえの電気街、秋葉原の遺伝子を最も濃く受け継ぐ場所。

こんな場所が、自分の部屋から僅か徒歩15分の距離にあったなんて。

僕にとって秋葉原ば家電とゲームとメイドとフギュアの街、くらいの認識しかなかった。

 

目的地であるその店は、昔のロールプレイングゲームに出てくる道具屋みたいだった。

常連客は古強者ばかり。店主と客はまるでファンタジー世界の剣士と鍛冶屋のごとく、だ。

僕のようなルーキーが何か口出しできるような雰囲気などあるはずもない。

 

それでも、僕は今日ここに来た。

決めなければならないから。

そして、まだ直接に目的のものを見たことがない僕は、それをちゃんと「見て」決めたかったのだ。

 

見たところで何がわかるのだろう。

お前の様なルーキーはもっと軽くて使いやすいものがいいのではないか?

そもそもそれに見合う何かを、お前は持っているのか? 

なんども自問自答した。

 

候補は3つ。

東栄P-180AN

春日KmB280F

そしてゼネラルトランスPMC-170M

 

僕がこのビルを出るとき、おそらくどちらかが、僕のくたびれたトートバッグに入っているはずだ。 

僕はポケットの財布の手触りを確かめ、軍資金をしっかり入れてきたことを思い出すと、唇の端をわずかに笑みの形に歪めながら、昭和の雑居ビル、そのダンジョンへの第1歩を踏み出す。

ほんの少しだけ、あの古強者達に近づけるのかもしれない。そんなふうに思いながら。

 

電源回路の設計 

 

とかつまんない事を書いてないで、電源回路の設計です。

 

真空管に流す電流は、初段が1.5mA×2のSRPP、これがステレオなのでさらに×2で約6mA。出力段は40mA×2で80mA。

併せて86mAですが、出力段は場合によって片系50mA流すことも想定します。

電源トランスとしては100mA〜120mAくらいのもので間に合いそうですが、将来自分が高出力病に陥ることも想定して、ここは少し大きめのトランスを購入することにしました。

結局購入したのはゼネラルトランスのPMC-170Mになりました。


理由は電源容量が100mAを越えると、120mA〜180mAくらいの間はトランスのサイズとお値段ががあまり変わらなくなるので、それならデカいのにしとこう、という貧乏根性が発揮されたことと、単純に僕がお店に行った時にゼネラルトランスさんにほかのお客さんがおらず、すいてたから。

 

次に、整流方式ですが、これ、どっちがいいんだろう?

整流管とダイオード、どちらにもメリット、デメリットがあるっぽいので、結局は好みなのかなぁ?と思っています。

 

とりあえずここはダイオード整流で行こうと思いますが、将来的に整流管を使う改造を行うことも考えておきましょう。

ファストリカバリーの1200v×2Aが秋月にあったのでこれを購入することにしました。

 

平滑回路はチョークコイルを使ってみます。

重くてお高いのですが、RC平滑回路を多段にするよりも工作が楽かなと。

こちらはゼネラルトランスのPMC-1030Hを選定。10Hで300mAも流せるのであれば十分でしょう。

 

ヒーター電源は、EL34も12AX7も6.3Vで動かすことができますが、初段のSRPP回路はヒーターバイアスが必要になります。これはB電源から分圧してざっくり60v前後を掛けることを考えておきます。

 

ヒーターについては、傍熱管はネット上の回路図を見ても交流点火しているものが殆どです。

という事はたぶん交流点火で問題ないと思うのですが、直流でヒーターを点灯した方がハムが減って静かになるような気がして仕方がありません。

 

まぁ、どうせ自分の趣味で作るアンプですので、好きなように作ってみようということで、ヒーター電源もブリッジダイオードを使って整流して、直流点火することにしました。

これまた秋月でショットキーバリアで60v4Aのダイオードブリッジ(RBA-406B)を見つけたので、こいつを使います。

整流後の平滑には、15000μ16vの電解コンデンサを入れることにしました。ダイオードの直後に0.22Ω〜の抵抗を入れれば、おそらく狙い通りの電圧が取り出せるんじゃないかと思います。このあたりの素子定数は実際に組んでみて考えればいいか。

この場合のヒーターバイアスって、ダイオードブリッジの前に入れとけばいいんだよね?たぶん。

 

まぁ回路図書きながら調べつつ進めていきたいと思います。